[毎日小学生新聞]連載「本の森」Vol.5 魯迅『些細な事件』

毎日小学生新聞で連載中の『本の森』2月は魯迅さんの「些細な事件」を紹介しました。

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鬼は外、福は内。ツマズクさんが通っているミミズク小学校でも、先週こどもたちの元気な声が響き渡ったばかりです。今日は鬼をやっつけたばかりのツマズクさんが、担任のアダナ先生のところにまじめな顔で相談にやってきたようです。
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ツマヅクさん(以下ツ):先生、テストのことで相談があります。

アダナ先生(以下ア):おや、どうしたんですか、いつになくマジメな顔して。

ツ:今日、先生が返してくださった算数のテスト、採点ミスがあったんです。

ア:あれ、ツマヅクさんは百点満点だったのに。どこが間違っていますか?

ツ:この問題です。答えは合ってるんですけど、計算式が間違っていませんか。

ア:うーん、そうですね。確かに、式は間違っているようですね。

ツ:そうでしょう。だから私の点数を減点してほしいんです。

ア:まあ、いいじゃないですか。おまけしておきましょう。

ツ:アダナ先生!だめです。私の心が、私のことを許さないんです。

ア:ツマズクさん、魯迅の『些細な事件』というお話を読んだことはありますか?

ツ:いえ、読んだことはありません。どんなお話なんですか?

ア:魯迅さんが、朝早く仕事にでかけるときに、人力車に乗っていたんです。

ツ:なるほど。

ア:人力車っていうのは今のタクシーみたいなものです。そしたらその人力車に、歩いている女性の服が引っかかった。それで、女性は転んでしまうんです。

ツ:事故じゃないですか。

ア:そうなんです。でもね、魯迅は、運転している車夫に「早く行ってくれ」と言ってしまうんですね。

ツ:自分が運転していたわけじゃないけど、乗っていた車が事故を起こしたのだから警察に行くべきでしょう。

ア:運転していた車夫は、魯迅には耳を貸さず、女性を連れて交番に行くんです。

ツ:よかった。その話と私のテストになにか関係があるのでしょうか?

ア:魯迅はこの出来事を思い出すたびに、後悔もするし、希望や勇気もわくと書いている。

ツ:えーっと、ということは私はどうしたら・・・

ア:採点ミスは私のミス。どうかこのまま、百点満点でお受け取り下さい。そのほうがわたしにとって、ずっと大切な思い出になる気がするんです。